第53回東工大現代講座開催報告
第53回東工大現代講座を,第33回すずかけ祭の特別企画講演会として,すずかけ祭実行委員会との共催により,以下のとおり開催しました。
| 日 時: |
平成23年5月14日(土)14:00〜15:30 |
| 会 場: |
東京工業大学すずかけ台キャンパス 大学会館(すずかけホール)3階多目的ホール |
| 講 師: |
寺西俊一先生(一橋大学大学院経済学研究科教授) |
| 演 題: |
「環境経済学の考え方−持続可能な経済と社会を目指して−」 |
| 聞き手: |
原科幸彦先生(本学大学院総合理工学研究科長) |
| 司 会: |
岡畑惠雄先生(東京工業大学附属図書館すずかけ台分館長,大学院生命理工学研究科教授) |
| 参加者: |
80名 |
今回は,寺西俊一・一橋大学教授を講師にお迎えし,「環境経済学の考え方 −持続可能な経済と社会を目指してー」という演題でご講演いただきました。
式次第としては,まず原科先生から,寺西先生の紹介と持続可能な社会についてのお話があり,次に寺西先生のご講演,最後に寺西先生と原科先生との対談という順序で行われました。
原科先生のお話では,環境・経済・社会という3つの面は,この順序で優先されるというお話,東京とニューヨークとの写真の比較から,都市計画の差が如実に現れているというお話が印象的でした。
寺西先生の講演はスライドを交えながら多岐に渡りましたが,主に下記の点を強調されました。


- 東日本大震災によって莫大な社会的費用が発生したが,これは従来の経済計算においては無視されてきた「考慮されざる費用」(K.W.Kapp)が顕在化したものであり,今後,責任と費用負担が厳しく問われることになる。
- 今後わたしたちが目指すべき豊かさとは,「経済成長」ではなく「経済発展」であり,その内実は"Human well-being"の質的向上にこそある。
- 環境クズネッツ曲線においては,所得水準の向上につれ,初めは環境汚染が増大するがあるレベルからは汚染は減少する。この山形(逆U字型)の曲線にトンネルを掘ることはできないか,つまり最初から汚染を増大させないで所得水準を向上させることはできないか,これは政策的課題である。
- 昔は公害に見られるように,環境と経済とは対立するものだった。それが1967年の公害対策基本法により,環境と経済との調和論(ただし経済優先)が出てきた。さらに93年の環境基本法では,経済も環境も大事という両立論になった。しかし現在ではさらに進んで,環境は経済にとっての容器であり基盤である,この容器を壊してしまったら中身である経済の発展はないという認識が必要である。
- 今回の大震災によって,原発の安全神話,安価神話は崩壊した。これからは真の安全とは何か,真の安価とは何かを問うていかなければならない。
寺西先生と原科先生との対談では,下記の2点が中心的話題となりました。

- 環境は経済と対立せず,むしろ環境を守らないと新たな費用が発生してしまうのであり,環境が経済の基盤であるという認識が大事である。1969年にアメリカで成立した国家環境政策法(NEPA:National Environmental Policy Act)でも環境が許す範囲内での経済という考え方がすでに打ち出されており,これは容器論に近い。
- 従来言われてきた原発コストは,原発推進派の見積であるので非常に安くなっている。しかも原発関係の学会は閉鎖的村社会であり,国民の監視や自由な議論を封じ込めてしまった。アメリカでは79年のスリーマイル原発事故から新規の原発建設は行われていない。これはコストが引き合わないからである。アメリカ東海岸やフランスでの原発コストが安いのは地震がないからであり,日本にはあてはまらない。日本国民全体がそれでも原発を必要とするのか,さらに技術を向上させて安全な原発を志向するのか,それとも原発をなくすのか,選択を迫られることになる。
そして最後に寺西先生から,本気で脱原発社会を作るために,色々な技術的困難を東工大の技術力で突破してもらいたいという希望と激励の言葉で締めくくられました。
まさに時宜を得た講演で,問題点の指摘と今後わたしたちが目指すべき方向性を明確に述べられ,聴衆の皆さまも非常に集中して聞かれていました。
最後に,講演会の実施にあたり多大なるご支援をいただいたすずかけ祭実行委員会関係者の皆さま,ご来場いただいた皆さまに厚く御礼申し上げます。
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